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糖尿病
生体組織が正常に機能するためのエネルギー源となるブドウ糖を血中から各組織に取り込むホルモンであるインスリンの機能が低下することにより、血液中の糖分(血糖)が異常に高くなった状態です。機能維持に必要な栄養素の取り込みが低下するため各組織が慢性的な栄養不足に陥り、最終的には生命維持が困難な状態になるほか、長期的な高血糖状態によって抹消血管や神経細胞に損傷を受け、失明、腎不全、組織壊疽(えそ)などにつながる重篤な合併症を引き起こすこともあります。
■詳細
人間や動物は、食事によって摂取した糖分を全身組織のエネルギー源として利用することで生命を維持しています。この糖分を組織細胞に取り込むために欠かせない役割を担っているのが、血液中の糖分(血糖)の上昇に伴ってすい臓から分泌されるインスリンというホルモンで、各細胞のインスリン受容体と結合して細胞に血糖を取り込むよう働いています。
このインスリンの分泌や働きが何らかの原因によってが低下し、組織がエネルギー源として必要とする血液中の糖分を取り込まなくなって血糖が異常に高くなる状態が糖尿病です。
糖尿病には、免疫介在性疾患やすい炎などによってインスリンを分泌するβ(ベータ)細胞が破壊され、インスリンの分泌が停止してしまうインスリン依存性糖尿病と、主に肥満によってインスリンそのものの機能が低下するインスリン非依存性糖尿病とがあり、イヌにおいてはインスリン依存性糖尿病が、またネコにおいてはインスリン非依存性糖尿病が多くみられます。
糖尿病の症状には、血液中の余剰な糖分を排出するための尿量の増加のほか、尿によって失われた水分を補給するために水を多く飲む多飲、そして各組織がエネルギー不足に陥ることによる元気消失や体重減少、被毛の乾燥や毛づやの消失などがあります。また長期的な高血糖状態は白内障や腎疾患のほかに、有害物質となるケトン体が血液中に蓄積し、ショック、衰弱、こん睡状態を引き起こす糖尿病アシドーシスといった重篤な合併症がみられることもあり、場合によっては命を落とすこともあります。
【症状】
多飲多尿
元気消失
体重減少
被毛のつやの消失
白内障
腎障害
嘔吐
口臭(アセトン臭)
脱水
意識障害
衰弱
昏睡
■対処法
イヌに多く見られるインスリン依存性糖尿病では、すい臓におけるインスリンの合成・分泌能力が失われているため、インスリン製剤を注入して不足しているインスリンを補充するインスリン療法を生涯にわたって継続する必要があります。また症状を良好な状態に保つために、食後の一過性抗血糖を抑制する効果のある高繊維食を中心とした糖尿病用食による食事管理や、適度な運動による体重制限も欠かせないとされています。
一方、ネコの糖尿病の大半を占める肥満によるインスリン非依存性糖尿病においては、体重管理のための食事療養を中心に、原因となっている肥満や脂肪肝といった基礎疾患の治療が行なわれます。
症状によってはインスリン投与が考慮されますが、ネコの場合は必要とされるインスリンの量に変化があるため、定期的に検査を行ない、適切とされる投与量を決定します。
■その他
インスリン非依存性糖尿病の主な発症原因である肥満にさせないためにも、日ごろから食事の量を調節し、適度な運動をさせることが重要です。
また早期発見のために定期健診を欠かさないことも大切です。
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