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肛門嚢炎
イヌやネコの肛門の左右には肛門嚢という穴がありますが、この肛門嚢が肛門嚢内の分泌物の貯留や、細菌の感染によって炎症を起こした状態が肛門嚢炎です。炎症によって肛門周辺に痛みや違和感を生じることから、イヌやネコが肛門部を気にする素振りをみせたり、お尻を床にすりつけたりするような様子が見られるようになります。どちらかというとイヌに多く見られる病気です。
■詳細
肛門嚢とは、イヌやネコの肛門の左右にある嚢状の腺組織です。この肛門嚢からは排便時や興奮時に独特の臭気を放つ分泌物が分泌され、身の保全や縄張りの主張などといった役割を果たしているとされています。ちなみに散歩中のイヌ同士がお互いのお尻をかぎ合っているのは、この肛門嚢の臭いをかぐことで、お互いがどのようなイヌかを知るためである、と考えられています。
通常であればこの肛門嚢の分泌物は、排便時の肛門周辺の括約筋の収縮と共に自然に排泄されます。しかし便秘や下痢、高齢、肥満、そしてストレスなどの要因によってこの分泌物の排泄機能が低下すると、分泌物が肛門嚢内に貯留するようになり、肛門嚢内部の粘膜を刺激することによって炎症を引き起こすようになります。これが肛門嚢炎と呼ばれる症状です。
炎症や分泌物の貯留による肛門周辺の痛みや違和感が引き起こされることから、イヌやネコが肛門周辺や尻尾を気にする様子が見られるようになり、また炎症部に細菌が感染することによって症状が増悪し、痛みやかゆみ、はれ、出血や膿のような分泌物などが認められようになります。さらにひどい場合には、肛門嚢が破裂してしまうこともあります。
【症状】
・肛門付近を気にするそぶりをみせる、お尻を床にこすりつける
・肛門部の赤みやはれ、出血や膿のような分泌物
・肛門部に触られることを嫌がる
・肛門嚢の腫瘍(内部に膿が溜まり、はれあがった状態)
■対処法
初期の段階であれば、肛門嚢を外部から圧迫して貯留している分泌物や膿を排出させ、抗生物質を投与して感染を抑える処置が取られます。
肛門嚢に膿の貯留が著しい場合は、外科的処置による排膿、洗浄を行ない、抗生物質を投与します。
肛門嚢が破裂してしまっている場合は、内部を洗浄した後に縫合します。
また、再発を繰り返すようであれば肛門嚢の摘出を行ないます。
■その他
通常であれば、肛門嚢内の分泌物は自然に排出されるようになっていますが、便秘や下痢といった排便時の異常などによってその排出機能が低下し、肛門嚢内に分泌物が貯留してしまう場合があります。そのためイヌやネコがお尻を気にするようなそぶりを見せた場合、また、小型犬や老齢のイヌやネコなど、もともと肛門嚢の分泌物が排出されにくい動物などにおいては定期的に肛門嚢を絞り、内容物を排出させてあげる必要があります。肛門嚢の絞り出しは家庭でもできますが、難しい場合には動物病院やペットショップ、ペットサロンなどでも絞ってもらえます。
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