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  • 2017年01月04日

  • ネコの微胞子虫症エンセファリトゾーン症


  • コラム出典:Microsporidiosis Encephalitozoonosis in Cats
    http://www.petmd.com/cat/conditions/infectious-parasitic/c_ct_encephalitozoonosis


    ネコの寄生微胞子虫感染症
    エンセファリトゾーンカニキュリ(E. cuniculi)は寄生原虫で、肺や心臓、腎臓、脳で拡がって病変をつくり、高度の機能障害を引き起こします。エンセファリトゾーン症はこのエンセファリトゾーンカニキュリが起こす原虫感染症ですが、ネコに起きるのはまれです。― ウサギやイヌに発症するのが一般的です ― しかしそれでもネコも同感染症と無縁ではありません。ほかのネコと屋外に出て、野生のウサギのような動物が住む環境で過ごすからです。

    エンセファリトゾーンカニキュリが微胞子虫目に属する寄生原虫であるため、同感染症は一般に微胞子虫症とも呼ばれています。エンセファリトゾーンカニキュリの胞子体は尿中に排泄されますので、感染した動物の尿をなめたりにおいを嗅ぐことで経口・経鼻的に(口や鼻から)感染すると思われます。そのため屋外の小屋で動物を飼うと感染の危険が高まります。しかし微胞子虫類は動物の体外で長期間生存できるため、屋外に出るネコのほとんどが感染する危険性があると考えて差し支えありません。逆に屋内で飼っているネコがこの寄生虫に感染する確率はきわめて低いです。

    治療法はまだ実験的なもので支持療法が中心となります。ネコは感染しても大抵は内科的治療なしで完治します。しかし、仔ネコが感染すると(感染はほとんどの場合胎仔期ないし授乳期に起こります)、死亡する例が多くなります。仔ネコは死産となるか、生まれても成長障害により若齢のうちに死亡するおそれがあります。

    さらに、同感染症は人畜共通感染ですのでヒトにも感染します。特に免疫機能が低下しているヒトは要注意です。周囲の環境を清潔にすることが不可欠です:70パーセントエタノール溶液を使って、感染した動物の尿はすべて、さらにネコの生活圏をくまなく消毒してください。

    症状と型
    新生仔感染(生後約3週間で発症)
    • 発育不全
    • 貧弱な被毛、小さな体
    • 発育障害
    • 腎不全への進展
    • 神経系の合併症

    成獣(大人のネコ)
    • 脳異常
    • 攻撃行動
    • 痙攣
    • 失明
    • 腎不全への進展

    原因
    感染動物の尿中のエンセファリトゾーンカニキュリ胞子体が原因です。これをなめたりにおいをかぐことで拡散し、感染するのが一般的です。

    診断
    獣医は、飼い主からネコの既往歴をしっかり聞き、続いて徹底的な理学的検査を行ないます。飼い主の側は、ネコの健康状態と今回の来診の原因となった症状すべてについての背景知識を最大限提供する必要があります。そのネコが最近出産したなら、生まれた仔ネコの体はとても小さく、被毛は貧弱でツヤがないかもしれません。治療中の仔ネコの場合も同様です。

    この感染症の症状の中には、ほかの疾患の症状と似たものがあります。非典型的な攻撃性がその例ですが、この場合、獣医は狂犬病やトキソプラズマ症感染の有無を検査しようとするかもしれません。大人のネコであれば視野狭窄や完全な失明に陥っていたり、時々けいれんを起こすことがありえます。獣医はネコの血清生化学検査や全血球計算、尿検査を行ない、エンセファリトゾーンカニキュリがどの器官にもっとも強く感染しているか調べます。尿中の感染性胞子体を染色すれば顕微鏡で見て確認できます。

    治療
    重篤な腎疾患ないし脳疾患にまで進行していなければ、自然に完治する場合が多いです。体内からエンセファリトゾーンカニキュリが消失するまで殺真菌薬を使うと共に、支持療法を行なうことがあります。重い脳疾患または腎疾患に至っている場合には、安楽死させなければならないこともありえます。

    生活と管理
    この疾患に感染しているネコの尿はすべて避けてください。可能なら、ネコの尿が感染力を失うまでネコを獣医院で預かってもらうよう希望してもいいでしょう。それでも自宅でネコを飼う場合には、必ず、清潔にしやすいつるつるした床の上で周囲を囲って飼ってください。こうすれば、70パーセントエタノール溶液を注いでネコの尿に含まれる胞子体を殺すことができます(尿が床に付着している場合に限ります)。トイレやトイレの砂の中敷きは使い捨てにすれば再感染の危険性を最小限にできます。そして使ったら捨てられる敷物や毛布/敷布を使えば、さらに徹底的な除去に役立つかもしれません。

    ペットからこの疾患に感染する危険性がいちばん高いのは、免疫力の低下した人々です。ネコからの感染のおそれがなくなるまで、可能な限り誰かにネコの世話を頼んでください。自分で飼う場合には、必要な予防措置をすべて講じて自身を感染から守らなければいけません(マスクや使い捨ての手袋等を使ってください)。