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  • 2016年09月14日

  • ペットの強迫性障害


  • コラム出典:Compulsive Disorders in Pets
    http://www.thepetsite.co.uk/news/15013/compulsive-disorders-in-pets/


    強迫性障害は人間の医療分野ではよく知られている疾患のひとつですが、動物にも発症するのを知っていましたか?とはいっても、イヌは自分の歩行数を数えたり電気のスイッチを3回確認するといったことはしません。実際、動物行動学者のケリー・バランタイン博士によると、イヌにおける強迫性障害というものは存在せず、一般的に強迫観念に取り憑かれたような行為を指すものとされています。

    反復行動、非思考

    イリノイ州シカゴにあるイリノイ大学獣医学部で動物行動学を教えているバランタイン博士は、この区別の裏にある根拠は侵入的かつ反復的な思考を意味する「執着」であり、イヌにおいては裏付けができません。この点以外に、強迫観念に取り憑かれたような異常行為はイヌと人間との間で違いはなく、通常の行動や日常生活に支障をきたします。

    「イヌの中には一定の行為を反復する傾向のある品種もあります」とバランタイン博士は言っています。

    「その場でくるくる回わったり尻尾を追いかける様子は、ジャーマンシェパードやブルテリアによく見られ、ボーダー・コリーでは光や影を追いかける動作、ドーベルマンではわき腹や腿に吸い付く癖がよく見られます」。

    これらの行為は特定の品種においてより多く見られる傾向がありますが、ほかの品種においても同様の行為が見られる場合もあります。

    強迫性障害は病的要因によるものと、行動的要因によるものに分けられます。その一例として、イヌが過度の毛づくろいをする場合には皮膚疾患や骨格筋の疾患が潜んでいる可能性があり、またその場をくるくる回ったり尻尾の付け根を舐める場合は、肛門周囲瘻がその原因である可能性があるとバランタイン博士は話しています。

    神経障害や消化器の損傷によってもこのような行為が引き起こされることがあります。例えばイヌが虫を追うようなしぐさをするフライバイティング(ハエ追い行動)ですが、この行為の原因としては強迫性障害、てんかん、そして消化器の損傷のいずれかが考えられます。つまり、このような行為が見られた場合には、原因が何であるかをかかりつけの獣医と見つけ出す必要があります。

    ストレスが強迫性障害のきっかけになることも
    行動的な強迫性障害はしばしばストレスによって引き起こされます。
    もしイヌが初めて会う人に挨拶したいと思う反面で、その相手に近づくことに恐れを感じている場合、イヌは葛藤を感じ、ふたつの異なる動機の間の板挟みになります、とバランタイン博士。

    神経質なイヌでは些細なストレスがかかる程度の環境であっても、強迫観念にとらわれたような行為を引き起こすことがあります。ストレスに加え、ほかのイヌや人間とのさまざまな関わりや経験の浅さがイヌにおける強迫性障害の症状を引き起こすことがあります。

    強迫性障害が病的要因や行動的要因によるものであっても、とあるペットの強迫性障害がほかのペットに強迫性障害を引き起こすことは考えにくいとバランタイン博士は話しています。しかし強迫性障害の症状が見られるイヌによる繁殖は、遺伝的要因が懸念されるため避けることが大切です。

    強迫性障害は、夜間の不眠などしばしばイヌと飼い主の生活の質に大きな影響を与えます。イヌの中には特定の行為を繰り返すことによって遊ぶ頻度が減ったり、食欲が減退するものもいます。道路を横断中や階段を下りている最中に尻尾を追いかける行為が起こった場合は危険です。さらに、直接的に尻尾を追いかける行為は尻尾自体に損傷を引き起こすことがあり、また過度に舐めることは皮膚の痛みの原因になることもあります。

    強迫性障害の治療
    ペットの強迫性障害の症状を認識し、できるだけ早く治療方法を探すことは非常に重要です。

    「強迫性障害は、まずストレスのかかる状況において急性の行為障害としてあらわれます。適切な治療がなされない場合、強迫性障害の症状がさまざまな状況で頻繁にあらわれ、日常生活に支障をきたすようになります」、とバランタイン博士は話しています。

    治療には薬物療法、管理療法、そして行動療法があります。イヌ用の強制障害に処方される治療薬には、フルオキセチンなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や、クロミプラミンのような三環系抗うつ剤などがあります。

    また飼い主はイヌの症状に積極的に対応し、症状を引き起こす要因を予測してそれらを減らすようにしなくてはなりません。症状を認識し、イヌを座らせたり横たわらせたりしてイヌの関心をそらせるようにすることも、イヌの行動をコントロールする方法のひとつです。

    罰が不安を助長
    活動的なイヌには強迫性障害の症状が起こりにくいという点から、バランタイン博士はイヌの生活環境を刺激に満ちたものにするよう勧めています。また強迫性障害の症状に対して何らかの罰を与えることは、イヌの不安を助長するため避けるべきだとしています。

    ところで、ネコにも強迫性障害は発症するのでしょうか?答えは「はい」です。典型的な症状としては家具などの生地をかじる、過度の毛づくろい、本来食べるべきでないものを食べる、自身の腿や尻尾を傷つけようとする、などが挙げられます。

    イヌと同様にネコの強迫性障害には病的要因が潜んでいることがあります。そのためネコに強迫性障害の症状が見られる場合には、獣医師の診断を受け、適切な療法を取ることが大切です。