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甲状腺機能低下症

喉のそばにある甲状腺という組織から分泌され、全身の組織のエネルギー代謝や成長、発達を促進する働きのある甲状腺ホルモンが低下した状態です。一般的に中高齢の中型犬から大型犬に多く発症する傾向があり、元気がなくなる、体重が増える、被毛の不良や脱毛、皮膚の乾燥や色素沈着、寒がる、歩行異常、徐脈など全身性のさまざま症状が見られるようになります。また比較的高齢となってからの発症が多い上に、症状が老化現象と似通っていることから発見が遅れ、最悪の場合は症状の悪化によって命を落としてしまうこともあります。


■詳細
甲状腺ホルモンとは、心臓や肝臓、腎臓、そして脳などをはじめとした全身の組織に作用し、これらの組織の代謝や活動、そして正常な成長や発達を促進する働きを持つホルモンです。
この甲状腺ホルモンの分泌が甲状腺の器質的、あるいは機能的異常によって低下し、身体の恒常性が維持できなくなる状態が甲状腺機能低下症で、活動力の低下や食欲の増加を伴わない体重の増加、皮膚や被毛の異常、歩行異常、徐脈、低体温などの症状が認められるようになります。
犬の中ではゴールデン・レトリーバーやシェットランド・シープドッグ、柴犬、ブルドッグといった品種を中心とした中型犬や大型犬に多く発症する傾向があり、小型犬に発症することは比較的まれなようです。

甲状腺機能低下症は、甲状腺の機能不全によって発症する原発性甲状腺機能低下症と下垂体の異常によって発症する二次性甲状腺機能低下症、そして脳の視床下部の異常が原因となって発症する三次性甲状腺機能低下症とに分類されていますが、犬においてはその約95%が原発性甲状腺機能低下症です。
発症要因には、免疫細胞による甲状腺の破壊や特発性の甲状腺委縮などが挙げられており、またその発症と遺伝との関連性が指摘されていますが、現段階ではその関連性は明らかではありません。
また典型症状が存在せず、症状の多くが老化現象と似通っている上に食欲が衰えることがないため、発症が見逃されやすく、放置されることで意識障害や昏睡といった重篤な症状に陥ったり、症状が進して命を落としてしまうことさえもあります。

【主な症状】
・活動性の低下、散歩に行きたがらない
・食欲増加を伴わない体重の増加
・寒がる
・皮膚の乾燥、色素沈着
・毛並み、毛づやの悪化、脱毛
・外耳炎
・前足を擦るような不自然な歩き方
・心拍数が遅くなる、徐脈
・発情期がなくなる

■対処法
合成ホルモン剤を用いて、不足しているホルモンを補充するホルモン補充療法を行ないます。
大抵の場合、投薬は生涯を通じて必要で、また、適切なホルモン値が維持できているかどうかの血中のホルモン値の測定を定期的に行なう必要があります。

■その他
犬の甲状腺機能は中高齢になってからの発症が多く、主な症状が「不活発」といった心身の活力の低下となるため、老化現象として見過ごされることも少なくなく、放置されることで寿命を縮めることもあります。また若い犬に発症した場合には成長不良などを引き起こす原因ともなることから、犬の元気がなくなってきた場合には下記の自己診断スコアを実施し、該当項目によってスコアが10点以上になるようであれば、動物病院で甲状腺ホルモン値の検査を受けることが推奨されています。

【甲状腺機能低下症の自己診断スコア(配点)】
1.体重が5kg以上である(1)
2.太っている (1)
3.食欲旺盛である(1)
4.避妊手術または去勢手術を受けている(1)
5.毛並みが悪い、毛づやが悪い、毛が硬い(2)
6.被毛がはげている部分がある(1)
7.被毛が生え変わらない(2)
8.毛を刈ったあと、なかなか生えてこない(1)
9.腹部の皮膚が黒ずんでいる(1)
10.日ごろから活発さがないように感じる(3)
11.人間や同居しているイヌと遊びたがらない(2)
12.呼びかけや周囲の物音に対して反応が鈍い(1)
13.前足の爪を擦って歩く、後ろ足を突っ張って歩く(2)
14.散歩に出かけるときあまり喜ばない(2)
15.散歩の時、すぐに帰りたがったり座り込んだりする(2)
16.運動した後でも息が荒くならない(2)
17.発情期が来ない、不規則(1)
18.発情期の後、妊娠していないのに乳汁分泌が多い(1)
19.コレステロール値が高いと言われた(2)
20.貧血気味と言われた(1)

●スコアが10点以上の場合、甲状腺関連ホルモンの測定が推奨されます。
●スコアが15点以上のとき、甲状腺機能低下症の疑いが濃厚です。

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